生成AIを社員が使い始めたのに「ルールがない」状態は、非常に危険です。実際、サムスン電子ではChatGPTの業務利用を許可した直後のわずか20日間で機密ソースコード等の入力が3件発生し、全社禁止に追い込まれました。セキュリティ企業Cyberhavenの分析では、従業員がAIに貼り付けるデータの約11%が機密情報です。
国もこれを重視しており、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、ハルシネーションや情報漏洩のリスクを示し、企業にファクトチェック体制やルール整備を求めています。逆に言えば、明確なガイドラインさえあれば、リスクの大半は防げます。この記事では、そのまま使えるテンプレつきで作り方を解説します(2026年6月時点)。
ガイドラインに必ず入れる5要素
- 目的と適用範囲:なぜ作るのか、誰・どの業務に適用するか。
- 入力してはいけない情報(最重要・後述のテンプレ)。
- 使ってよいツールと設定:許可するツール、学習に使われない法人プランの利用、履歴オフの徹底。
- 出力の扱い:必ず人がファクトチェックし、最終責任は人が持つ(→生成AIが苦手なこと)。
- 相談窓口と違反時の対応:迷ったら誰に聞くか。
【テンプレ】入力禁止情報 10項目
以下をそのまま社内ルールに転記して使えます。「迷ったら入れない」が原則です。
- 氏名・住所・電話番号・生年月日などを組み合わせた個人情報
- マイナンバー、運転免許証・パスポート・保険証などの本人確認情報
- クレジットカード番号・銀行口座・ID/パスワードなどの認証・決済情報
- 顧客リスト・取引先の連絡先、実名つきの問い合わせ内容
- 病歴・信条・前科などの要配慮個人情報(採用候補者の履歴書・人事評価を含む)
- 社外秘の経営・財務・売上データ、未公開の決算数値
- 未公開の契約金額・見積・取引条件、M&A等の未公表情報
- 自社のソースコード・設計データ(サムスンの流出原因はこれ)
- 未発表の製品情報・プレスリリース・社内議事録
- 他人の著作物の全文転載や、他人の画像・イラストの無断アップロード
運用のコツ:どうしても扱う場合は「氏名→Aさん」「自社→X社」のようにマスキングしてから入力します。
使ってよいツールと設定のルール例
- 業務では個人の無料アカウントではなく、入力が学習に使われない法人向けプラン(ChatGPT Enterprise/Team、Microsoft Copilot、各社法人プラン等)を使う。
- 機密を扱う会話は履歴オフ・一時チャットを使い、不要な履歴は削除する。
- 利用してよいツールを社内で指定・周知する(野良ツールの乱立を防ぐ)。各ツールの違いはChatGPT・Gemini・Claude・Copilotの比較を参照。
運用:作って終わりにしない
ガイドラインは配布するだけでは守られません。研修で周知し、定期的に見直すことが重要です。とくにCyberhavenの計測では、機密流出はコピー&ペースト経由で起きるため従来の漏洩対策では検知しづらく、最後の砦は「社員一人ひとりの判断」になります。だからこそ、ルールの理解とリテラシーを社員に根づかせることが鍵です。
社員のリテラシーを「証明」できる形に
ルールを渡すだけでなく、社員が正しく理解しているかを可視化できれば、運用は一段安定します。AI PASSPORTは、安全な使い方を含む生成AIの基礎を学び、**5段階認定(ブロンズ〜ブラック)**でリテラシーを証明できる仕組みです。法人での育成・ガイドライン定着とあわせてご活用ください。研修の進め方は生成AIの法人研修の進め方もどうぞ。
※本記事の事例・数値は各社発表およびCyberhaven・総務省/経済産業省「AI事業者ガイドライン」等の公開情報に基づく2026年6月時点の内容です。ツールの学習ポリシー・設定や法令は変わるため、最新は各公式でご確認ください。